競歩の途中計時である。 トラック種目 3000メートル競歩 5000メートル競歩 10000メートル競歩 20000メートル競歩 30000メートル競歩 50000メートル競歩 2時間競歩 ロード種目 10キロメートル競歩 20キロメートル競歩 50キロメートル競歩
15キロバイト (2,273 語) - 2018年10月22日 (月) 12:59



~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第68回~

 フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年ロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。


「そうだ、競歩に行こう」

 思い立ったが吉日というか元日。いよいよ東京五輪パラリンピックが来年に迫るなか、新年の物見遊山は競歩からスタートします。東京五輪パラリンピックの現地観戦を狙うにあたり、競歩というのはひとつ狙い目の種目です。公道を走る屋外種目、しかもチケット価格は「タダ」。同じく公道を走るマラソンでは有料席が用意されるのに、競歩はチケット販売皆無の完全タダ種目。大事なのでもう一回言いますが、競歩はお金を払いたくても払えない「完全タダ種目」なのです。

 だもんで、近くにめぼしい競歩の大会がきたら本稿でレポートを……と思って数年経つのですが、一向に競歩は来やがりません。

 実は日本における競歩の中心地は石川県でして、50kmの日本選手権は毎年4月に石川県輪島市で開催されています。毎年3月中旬に能美市で行なわれる全日本競歩能美大会(20km)はアジア選手権も兼ねるなど国際的な大会で、2015年には鈴木雄介選手がこの大会で20kmの世界記録を樹立しています。その鈴木選手も石川県出身というように、競歩と言えばまず石川県で、その他の大会も山形県兵庫県などでの開催となっており、主要大会は東京にはやってこないのです。そもそも全部で年に5回くらいしか大会ありませんし。

「ドマイナーやのぉ……」

「さすが完全タダ種目……」

「タダでいいから見ていってくださいの精神……」


 しかし、さすがは東京。主要ではないけれど、数えるほどしかない競歩の大会のひとつが東京でも開催されていたのです。それが東京選手権を兼ねて行われる「元旦競歩」なる大会。ブラック企業の新年の集まりみたいな、日付指定で強制的に歩かされそうなネーミングのこの大会は、2019年で67回を数える伝統あるもの。日本チャンピオンを決めたりするわけではありませんが、そもそも競歩の大会なんてロクすっぽないということで、まぁまぁトップクラスの選手が集うものであるといいます。

 正月と言えば、1年でもっとも長距離走への関心が高まる時期。元日には実業団によるニューイヤー駅伝があり、その後は箱根駅伝が行なわれます。「正月から一生懸命走っている人の苦しんでいる顔をダラダラ見守る」というのは、日本人の新春の喜びです。他人の苦しみをスパイスに「ああ、自分は休みでよかった!」と我が身の幸せを噛み締める時間です。そんなハイシーズンに、競歩もひっそりと苦しんでいたのです。これを逃せばまた1年後となるわけで、行くなら今日しかない。「競歩、今日でしょ!」と元日朝っぱらから見守りに行ったわけです。

◆「一粒で二度おいしい」競歩観戦

 元日から競歩するヤツなんかおれへんやろ……と思ってたどりついたコース。すると、早速まわっております。周回コースグルグルと。沿道には主に関係者と家族、そしてわずかな観戦者。その数は100人とか200人くらいでしょうか。1周約1.3kmのコースにおいて、ポツリポツリと人が立っています。わずかににぎわっているのは関係者が集うフィニッシュ地点くらい。箱根駅伝で言えば「10m分」くらいの人数がうすーく1.3kmに散らばっている感じです。

 本来なら非常に注目を集めるであろう、失格掲示板のまわりも運営のオジサンが固まっているばかり。競歩では「ロス・オブ・コンタクト(両方の足が地面から離れる)」、「ベント・ニー(前脚のヒザが曲がる)」など歩く姿勢に違反があると警告され、累積すれば失格となります。審判員はコース各所で見張っており、その状況をまとめて知らせるのが失格掲示板ですので、本来なら非常に重要な内容を示している場所のはずですが、あんまり気にされてないというか……細かいことはどうでもいいというか……確認に訪れる人がいるわけではありません。

 そりゃそうか。他人の苦しんでいる顔を見守りたいだけならテレビニューイヤー駅伝を見ればよく、元日から出掛けるならまず初詣です。明治神宮のすぐそばまできて、神宮ではなく競歩に行くというのは、マイナーな選択かもしれません。東京で競歩を見ようと思ったらココしかないだろうという貴重な機会なのですが、参加選手のほうが人数が多いんじゃないかという勢いです。

 しかも、よくよく見ているとかなりの観戦者数水増し疑惑も。

 競歩というのはマラソンと違って、「周回コース」でのレースというのが決まりです。1周2kmほどの周回コース(あるいは直線折り返しコース)をめぐるため、非常に観戦がしやすい。この大会も神宮外苑絵画館をめぐる約1.3kmの周回コースとなっており、さっき通り過ぎた選手が5分ほどで再び目の前に戻ってきます。

 その意味では沿道の同じポジションに立っているだけでもいいのですが、何故か観衆が減ったり増えたりチョコチョコ動くのです。「はて……?」と思ってその動きについていくと、なんと観衆は「周回コースの内側を横断して、メインストレートバックストレートを行き来し、1周あたり2度応援をしていた」のです。本来ならメインストレートバックストレートで均等に割れているべき人数が、民族大移動することで実質的には2倍水増しになっている。全員がそうじゃないにせよ、水増ししてもアレくらいである。なかなかのマイナー感です。

 せっかくなのでポジションを変えながら見守ると、次々にテンポよくやってくる選手であったり、神宮外苑の「映える」風景であったりが、とても気分を高めてくれます。競歩なので「走れば追い抜ける程度の速度」であるというのもなかなかいい。選手を追いかけ、追い抜いて、映えるポジションで見守る。これはマラソンとはまったく違う感覚です。マラソンでは一度見送ったら基本的にそこで終わりですが(※電車で先回りとかはできるが)、競歩は何度も選手を見守れるという意味ではお得感ははるかに上です。

 東京五輪本番では皇居外苑の二重橋前を中心とし、直線道路を折り返しながら男女20km、男子50kmの各種目を行ないます。猛暑が懸念されることから男子50kmの種目では、午前6時スタートという早朝からのレース。それでもゴールまでは約4時間が見込まれる長丁場です。これを沿道にずっと立って見ているのはつらいですが、少し歩けば東京駅や銀座も臨む環境は、「選手のスタートを見る、東京駅で弁当食べる、戻って選手を見る、銀座でお茶する、戻って選手のゴールを見る」などと東京を楽しみながら競技を見守る観戦スタイルも堪能できそう。

◆美人アスリートを間近で応援できる(しかもタダ)

 日本勢は、男子20kmには世界記録保持者の鈴木雄介選手、リオ五輪7位の松永大介選手らがおり、男子50kmにはリオ五輪銅メダルの荒井広宙選手、2017年世界陸上で銅メダルの小林快選手、およそ10年ぶりに日本記録を更新した野田明宏選手など有力選手が居並んでいます。マラソンでのメダル獲得はなかなか厳しいと想定されますが、競歩は「メダル候補」としての戦いが期待できるのです。そんな有力種目を、都心の好環境で、じっくりと何度も選手を見守りながら観戦できる。

 この大会にもひっそりと日本女子競歩界の第一人者である岡田久美子選手(リオ五輪16位)が出場していましたが、ファンに取り囲まれるでもなく、ていうか誰も取り囲む者などなく、まさに目の前を歩いていく姿を何度も見守ることができました。並んで歩いてみたら、ちょっとした神宮外苑デート気分さえも生まれたほど(※歩くのが早すぎてすぐに置いて行かれたが……)。

 むしろ観戦時の満足度という意味では、マラソンよりも上かもしれません。マラソンなんて選手を見る時間はほんの一瞬ですが、競歩はやる気さえあればスタートからゴールまでレースのすべてを見守ることができますし、失格という要素があることで最後の最後まで何が起きるかわからないドキドキ感もあります。空いてるし、タダだし、日本勢が強い。「普段から競歩をよく見てます」なんて人がいないだろうことも含めて、まさに穴場の名にふさわしい種目です!

 津田直彦さんは、日本人初の国際競歩審判員だそうです!

 競歩界の「いだてん」みたいなことなんですかね!

東京五輪出場最右翼の岡田久美子選手は、圧倒的なチカラで女子一般の部で優勝。大会記録も樹立


(出典 news.nicovideo.jp)