アイスクロス(英語: Ice cross)は、スケート競技の一つ。一般的にはエクストリーム・スポーツの一種に分類される。 スキークロスやスノーボードクロスのスケート版といえる競技で、基本的にはアイスホッケー用のスケート靴やプロテクター等を着用して行う個人競技。 3キロバイト (315 語) - 2018年5月9日 (水) 01:14 |
現地2月8日から9日にかけて、ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークで開催された、アイスクロス・ダウンヒル世界大会は、凍える夜を熱狂と興奮の渦に包んだ。
9日の決勝当日、気温はほぼ一定で、マイナス2~3度。ニットキャップを目深に被り、マフラーに顔を埋めていても、吹き付ける風で涙が流れる寒さだ。そうしたなか、「ATSX1000レッドブル・クラッシュドアイス・ボストン」のチケットを握りしめたボストンっ子が、入場ゲート前に列をつくっていた。
開場と同時に大勢のファンがなだれ込む。入場エリアはコース脇のほか、レッドソックスを応援する時と同じ観客席だ。すべて屋外。かなりの人が大会開始前までの間、コンコースの売店で暖を取っていたので、あちこちで話を聞いてみた。
◆アイスホッケー好き、フェンウェイ好き、隠れヤンキースファンも
「正直、この寒さだから、そのうち脱落して帰る観客がどのぐらい出てくるか見ものだわ」
若い女性2人組は、レース前にそう“予言”した。父親が球場で働いているため、このイベントのことを知ってやってきた。競技のことは知らなかったが、「面白そう、と思って来ただけなの」という。
男女のグループ4人組は、うち男性1人がアイスホッケー好きで、友人を呼びかけて来たらしい。「ずっと生で見たいと思ってたんだよ!」と、興奮気味に話す。連れの男性は、「僕はフェンウェイ好きだから、ここでのイベントなら良いかもって付き合ったんだ」と一歩引いた感じだ。
野球好きかどうか、レッドソックスのファンかを尋ねると、全員がうなずいた。ところが、少し間をおいて女性が耳打ちをしてきた。「実はヤンキースファンなの」。そこで「私もヤンキースは好き」と同意したら、「えー!」「なにぃ!」と男性陣。すかさず「ボストンにもヤンキースファンは結構いるのよ」と、もう1人の女性がフォローした。
この話を裏付けるかのように、メディアルームのセキュリティをしていた男性はヤンキースファンだった。他にも、「実は」と他チームや他スポーツのファンを公言し、それぞれが思い思いのチームのユニフォームやグッズを身に着けていることに気がつく。
よく見かけたのは、NHLで地元ボストンが本拠のアイスホッケーチーム、ボストン・ブルーインズのユニフォームを着た人。アイスクロス・ダウンヒル選手のバックグラウンドは、アイスホッケーが多いので納得だ。
それ以上に見かけたのは、同じマサチューセッツ州が本拠のNFLチーム、ニューイングランド・ペイトリオッツ(愛称はパッツ)のジャンバーや帽子を被った人。パッツは、ちょうど前週にスーパーボウルを制し、4日前にここボストンで優勝パレードが大々的に行われたばかり。そのせいか、レッドソックスのマークよりも、パッツマークを多く見かける。
いや、パッツファンでレッドソックスファンという人も少なからずいたようだ。アメリカでは、季節ごとに様々なスポーツを楽しむファンが多いので、ちょうど地元ではNFLムード冷めやらず、といったところだろう。
◆2010年にはアイスホッケーのプレーオフも開催。フェンウェイ・パークの“柔軟性”
前コラムでは、「歴史あるフェンウェイ・パークで氷の巨大コースを造っても大丈夫だったのか」を、関係者らに尋ねてまわったが、球場のスタッフやファンにも聞いてみた。
得られた反応は、誰もがウェルカムで肯定的。むしろ興奮気味に、「すごいよね、実際に巨大コースをこうして見ると迫力がある」「クレイジーな競技だよな。見るぶんには面白いけれど、やっている選手たちの気がしれないよ(笑)」と嬉しそうなくらいだ。
聞けば、フェンウェイ・パークにおける別競技の開催についても、昔からアメフトやサッカー、NHLにスノーボードのイベントなど、様々な大会が実施されてきたようで、地元ファンにとっても抵抗はないそう。だから、こちらも構えていた「歴史ある球場にけしからん」という保守的な意見を言う人には、ついぞ出会えなかった。
おそらく若い人が多く、コアな野球ファンよりライトなファン層が多かったというのもあるだろう。だが、それは若年層に野球ファンが減少しているアメリカはもちろん、球場側にとっても、若者をターゲット層に据えているレッドブルにとっても、“ウィンウィン”だったに違いない。
トラック設営の責任者マーク・ヴァン・デル・スラウスさんは、こうも言っていた。
「たくさんのボストンの人が来るし、たくさんの野球ファンも来るだろうね。融合がすばらしい大会になると思うよ」
事実、出場選手たちも、あまりベースボールには明るくないと言いながら、フェンウェイ・パークに“ハマった”という。
インラインスケート世界王者で昨季からアイスクロス・ダウンヒルに参戦した安床武士は、「(特設コースからの眺めは)歴代のレッドソックスの選手たちも“見たことのない景色”。そうした幸せをかみしめたい」と球場を目に焼き付けていた。
ジュニア部門3位と、日本人初の表彰台に登った山内斗真は、球場に入る際のセキュリティゲートで、手荷物チェックの済んだバッグにつけられるタグに興奮。「レッドソックスのマークでかっこいいから、もっと付けてって頼んじゃいました」と無邪気に笑う。
観戦に訪れた日本人にも出会うことができた。ハイテク産業の盛んなボストンに赴任しているボストン在住のエリート研究者で、聞けば「野球もまあまあ好きだけれど、フェンウェイ・パークでやっているのなら面白そうかな」「せっかくだから、日本人選手の応援をしたい」と、やってきたのだった。
氷点下の寒空にもかかわらず、レースが進むごとに場内の熱気は高まっていき、コース全体が見渡せる5階席は立ち見の観客で、前が見えなくなるほどになった。レースの合間には、名物の「Take Me Out to the Ball Game(私を野球に連れてって)」「Sweet Caroline(スイート・キャロライン)」が、オルガン演奏とともに流れ、球場中で大合唱が起きた。
アメリカ人選手が滑れば、どこからともなく「USA!USA!」のチャントが響き渡る。なかには選手のことを知らないのだろう。ただ「Go! You! Go! American!(行け!そこのお前!がんばれ!アメリカ人!)」と声を枯らさんばかりに応援する人の姿も。
そうした熱烈な地元ファンの応援の結果、ボストン大会は男子・女子・ジュニアのすべての部門で、キャメロン・ナーズ、アマンダ・トルンゾ、ジョジョ・ベラスケスという、アメリカ人のトップ選手がそれぞれ優勝をさらった。
早い話が氷上のかけっこ。シンプルなルールはファンを選ばず、見れば誰もがすぐにのめり込める。沢山の人が、「面白そうだから」と駆けつけたようだった。
欧米でますます人気の高まっているアイスクロス・ダウンヒルは、近い将来に冬季オリンピック競技になることを目指している。なお、アジアの次世代エース筆頭の山内は、現役大学生のルーキー。この後、16日に行われたATSX500の大会にも参戦すると、ついにジュニア部門で初優勝(日本人初優勝の快挙)を遂げた。わずか数か月で抜群のセンスとポテンシャルを発揮し、ますますの存在感を放っている山内は、ボストン大会でもトップ選手とともに、いわゆる“モデル写真”の撮影でもあるフォトセッションのメンバーにも選出されている。
こうした勢いは、他の日本人選手にも好影響を及ぼし、「チームジャパン」も結束して今までにない盛り上がりを見せている。これからもアイスクロス・ダウンヒルと日本人選手の活躍に、目が離せない。
取材・文・撮影/松山ようこ
(出典 news.nicovideo.jp)
コメント
コメントする